【導入事例】キャットミュージックカレッジ専門学校 様 / 学校 / 大阪府

Japan / Osaka, May 2015

main_banner 左より、冨江氏、美根氏、松川氏


大阪府吹田市のキャットミュージックカレッジ専門学校は、今年で専修学校化25周年という歴史のある音楽/音響の専門学校で、その歴史の中、数々のメジャーなアーティストだけでなく、SRやレコーディング業界にも優秀な人材を長年、輩出しています。
昨年、ミックスダウンとDAWの実習室のシステムにネットワークオーディオDanteを採用し、全面リニューアルしました。Danteを採用した経緯、運用方法等をシステムの選定や実際の運用に関わった美根宏史さん、松川貴陽さん、冨江昌令さんに、お聞きいたしました。


まずは学校の概要をお聞かせいただけますでしょうか?

1979年に主にJAZZのオルガンを教える音楽教室から始まった学校です。その後、音響も含めた専門学校となり、1988年の学校法人認可にともない、専修学校となりました。技術系で一番古いのは音響専攻で、当時は音響芸術専攻という名前でした。 現在は、音楽技術学科音響エンジニア専攻、及び、総合学科総合音楽専攻というプレイヤーからPA/レコーディングまでを学ぶ専攻があり、そちらでレコーディングやPA の授業を行っています。音響エンジニア専攻では、初年度は全学生同じ内容の授業ですが、二年目からPAとレコーディングのふたつのコースに分かれます。かつては初年度からPAとレコーディングが分かれていた時期もあったのですが、初年度は総合的に学習する、という風にしました。その方が学生にとって視野が広がるといいますか、初年度で自分のやりたい事を考えてもらい、二年目に自分にあった内容を選択してもらう様にしています。

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音響関連の専攻は約25年前からありますが、当時の大阪には、音響を専門とした専修学校は少なかったと思います。

授業の内容はどの様なものでしょうか?

キャットミュージックカレッジの場合では、機材をオペレートしたりするいわゆる「ソフト」の部分もそうですが、機材を作ったり修理したりする「ハード」の方も大事にしようと考えています。はんだ付けをする授業も、学科設立当時から今でもずっとカリキュラムとして存続しています。ケーブルを作ったり、簡易ミキサー、4バンドのパラメトリックイコライザー、DIなども基板から実際に作ったりして、「音響機材がどのような構造なのか」という事を理解出来る様にしています。

そうすることにより、現場に出てから機材のメンテナンス等で役に立ったりするだろうと思い、そこは大事にしています。キャノンの2番ホット、3番ホットであるとか、そういう事も理解しておいた方が現場でのトラブルシューティングに役に立つと思っています。歴代の学生が作ったであろうケーブルが、授業で使う立ち上げケーブルの中にたまに混ざっていたりしますね(笑)逆相になっていておかしいな、と思ったらそれだったりとか(笑)分解してみると酷いはんだ付けで「あ、これは学生が一番最初に作ったやつだな」とか(笑)

そういった歴史がある中、Danteを採用するに至った経緯というのはどういったものだったのでしょうか?

先ほど見ていただいた実習室は、主にミックスダウンとProToolsのオペレートを学習する実習室なのですが、従来より、ひとつの講師卓と20の学生用卓がありまして、講師卓から流すマルチトラックの音源が学生卓に送られ、それを学生がミックスする、という仕組みでした。それを更新するにあたり、ProToolsだけを学習する部屋にしよう、という考えが最初にあり、従来の仕組みを全て無くし、サーバーに学生がアクセスしてセッションファイルをダウンロードして、という教室にしようと考えていました。

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また、ミキサーもなくし、ProTools用のリモートコントローラーを使用し、ミックスするという方向性でしたが、実際に授業を行う講師陣と打ち合わせを重ねるうち、「ミキサーを触る」という環境を無くすのはよくない、という話もありまして、やっぱり「ミキサーでミックスする」という事も出来る様にしたい、長年培ってきた従来通りの授業の方法を無くさない方が良い、という話になり、最終的に「ProToolsでミックスする。ミキサーでもミックスする。それを両方出来る様にする」という条件下で機材選定に入りました。

その条件を決めた後、従来通りの仕組みを継続し、全てアナログで引っ張ろうという考え方をしていたのですが、アナログだとメンテナンスの面での問題もありますし、DAWであるということ、ミキサーもデジタルであること、ということもあったので、回線もデジタルにしよう、という方向性になりました。

また、それとは全く別の話で、SRの世界も、どんどんとデジタル化が進み、ネットワーク化していっているので、Danteをはじめとするそれらネットワークオーディオをどう教えようか、どう授業に盛り込もうかという大きな課題もありまして、それらも講師陣で常々会話していました。
教室の話に戻ると、ミキサーは色々な候補があったのですが、学生が社会に巣立っていった後でも「ヤマハのデジタルミキサーを触ったことがある」ということは役にたつと思い、デファクトスタンダードでもある01V96iに決めました。
それならば、Dante対応の拡張カードであるDante-MY16-AUDを01V96iに挿して、この1対20で各16chという膨大な回線をDanteで実現することが出来るのではないか、さらにマルチチャンネルの回線というだけでなく、もっと色々な事が出来るのではないか、という話になったんです。

そのアイデアを販売店に相談して、ヤマハのサポート窓口に色々確認してもらったのですが、問題ない、という返事がありました。ただ「1対20で各16ch」という接続は、「理論上はできるが、前例は無い」という事だったのですが、実際に導入してみると理論通りで問題なく運用できました。

不安は無かったですか?

むちゃくちゃありました(笑)

「そんなことができるのか?」という不安を関係者のだれもが抱いていましたが、ヤマハ側から「出来る」という力強い回答もありましたし、自分たちの理想を実現出来るのはもうこれしかない、という風にも思っていましたので、導入しようと決めました。

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ただ、インストールしてからしばらくはDanteのクロックの仕組み等を上手く理解できていなかったこともあり、前の授業終わりで違う授業が始まると、音が出ないとかの混乱はありました。特に導入した当時の4~5月はそれらがわかってなかったので、ヒューマンエラーなのか機械のトラブルなのかがわからず多少の混乱はしていましたが、ひとつひとつ調べていくと、ほとんどがヒューマンエラーだということがわかり、5月の後半くらいには、何か起こっても、これはヒューマンエラーだな、という判断が付く様になっていました。Danteのクロックの仕組み等を理解出来る様になった今では、全く問題ありません。ノントラブルです。

今朝の授業でも、ある学生がマイクを使ってチェックしていたら、隣の席の学生が「あれ?あいつの声が聞こえる??」という状況がありました。パッチが変わっていたのが原因だったのですが、その状況を見て、すぐに原因がわかったので、学生と大笑いしながらパッチをし直しました。仕組みを理解している今では、本当に単なる笑い話ですね(笑)
それらを理解せずにアナログの感覚で話すと「これはダメだ」という話になりますが、中身をしっかり理解して設定さえすれば、確実に動いてくれるシステムだと今は思っています。
このシステムは講師4人で使用していますが、今お話しした経験から、講師のレベルを揃える為にも研修は続けていかなければならないと感じています。ベーシックな研修はもちろん済ませていますが、ネットワークオーディオは日進月歩ですから。

このシステムにして良かったと感じることは?

授業をしている中で、このシステムがこうであればよいのに、ということがよくあります。例えば、ミックスの授業であれば、各学生がどの様なミックスをしているのか、という事を確認していきます。今までだと、二股のヘッドホン端子を持って各卓を周っていましたが、Danteのパッチを変えれば、各卓の聴き比べができるのではないかと思い、実際やってみたら講師が傍らにいるとやりづらいだろうと思いますし。それを授業中に思いついてやってみたら、すぐに出来ました。追加費用無しで出来た、というのは大きいですね。アナログだと床をはがして回線を引っ張って、とかしなくてはならないですから。

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今後、ネットワークオーディオの授業は、考えていますか?

考えていますね。Danteに限らずですけど、「ネットワーク」というものの考え方を学ぶ授業はいずれしていかなければならないと思っています。PA/レコーディング問わずそういう状況になってきていると思いますので。気がつけばそういう世界が当たり前の世界になっていると思いますし。

今回のシステムを導入した感想を一言で言えば何でしょうか?

便利、の一言です。自由度が凄く上がりました。ようやくこれからの時代の学習形態に近づけたかな、と思います。カリキュラム等を考えるにあたっても、あれもできそう、これも出来そう、という話をすることが出来る様になりました。「これからの音響の教育」のスタートラインにようやく立ったかな、という感じがします。今後の現場のスタンダードに近いものになったと思いますし。Danteを使用することによって、長年培ってきたこの学校の伝統的なものは崩すことなく、さらに新しい事にチャレンジしていく、という事が出来たと思います。

そういえば、CLシリーズのキャッチコピーが「The standards stay, but innovation neverends.」だったと思いますが、まさしくそれと同じですね。

本日はありがとうございました。


【学校情報】

logo

キャットミュージックカレッジ専門学校
住所:〒564-0062 大阪府吹田市垂水町3-29-18
URL http://www.cat.ac.jp/


データ

製品情報 DANTE-MY16-AUD
01V96i