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久留米シティプラザ様 / 総合施設 / 福岡県

Japan/Fukuoka, Dec 2016

久留米シティプラザ『ザ・グランドホール』に導入されたヤマハ「RIVAGE PM10」

RIVAGE PM10 導入レポート Vol.2 久留米シティプラザ

(隔月刊「PROSOUND」2016年12月号より転載。取材協力:久留米シティプラザ 写真:辻内真理)


一昨年のInter BEEで初披露され、昨年末から出荷が開始されたヤマハのデジタル・ミキシング・システム、「RIVAGE PM10」。名機「PM1D」の後を受け継ぐ、ヤマハの新世代フラッグシップ・コンソールだ。アナログ技術とデジタル技術を融合した“ハイブリッドマイクプリアンプ”や、名匠:Rupert Neveとのコラボレーションによって開発された“SILKプロセッシング”、あらゆるオペレーションに対応する柔軟なサーフェース・デザイン、大規模なシステムを実現する独自プロトコル“TWINLANe”の採用など、様々な特徴を備える「RIVAGE PM10」は、まさにヤマハ製業務用コンソールの集大成と言っていいだろう。
出荷開始以来、多くの会社/施設に導入されている「RIVAGE PM10」。本誌ではその導入レポートを随時掲載しているが、第2回目にご紹介するのは福岡県久留米市の複合施設、久留米シティプラザ。今年4月オープンした久留米シティプラザは、ホールや会議室、広場などから成る大型施設で、その中心となる大ホール『ザ・グランドホール』に「RIVAGE PM10」が導入された。他に先駆けて導入された「RIVAGE PM10」。その選定理由や使い心地について、関係者に話を訊いてみた。

久留米市にオープンした大規模な複合施設 久留米シティプラザ

今年4月、福岡県久留米市の中心部である六ツ門地区にオープンした久留米シティプラザは、複数のホールや広場などを擁する大規模な複合施設だ。施設内には、大・中・小の会議室や飲食店/ショップなどもあり、文化芸術の拠点というだけでなく、市民の交流拠点・六ツ門地区の商業拠点としての機能も併せ持つ。オープン以来、コンサートや舞踏、演劇をはじめ、学会、発表会など、様々なイベントが行われており、久留米市の新しいランドマーク、“文化芸術の拠点”“賑わい交流の拠点”として、早くも市民の間に浸透しているようだ。

そんな久留米シティプラザの中核を成す施設が、『ザ・グランドホール』と名付けられた多目的ホールである。優れた音響特性と充実の舞台設備を誇る『ザ・グランドホール』は、クラシック・コンサートからオペラ、ミュージカル、歌舞伎など様々な催しに対応。4階層の客席(計1,514席。車椅子10席、多目的室1室を含む)は非常にゆったりとした造りになっており、リラックスしながら演目を楽しむことができる。音響・快適性・雰囲気、そのすべてにおいて最上級のコンサート・ホールと言っていいだろう。

久留米シティプラザ 舞台技術課 音響チーフの岩本道雄氏は、「コンサート以外の様々な演目にも対応できるよう、音響設計には特にこだわってもらいました」と語る。「オペラなどでも使われるので、響きだけでなく言葉の明瞭度を考慮した設計にしていただきました。結果として“楽器の粒”が立つ音響特性になっていると思います」(岩本氏)
久留米シティプラザの音響アドバイザーを務めた渡邉邦男氏は、「この『ザ・グランドホール』では、心地よい響きのなかでの言葉の明瞭度を追い求め、建築家や施工業者と共に、カット&トライを重ねながら施工を詰めていきました」と続ける。
「希望を伝えて後はお任せというのではなく、プロセニアムの形状やその機構など、皆んなで考えて一緒に造っていったホールですね。今まで、いろいろな現場に関わってきましたが、これまでになく深く関わったホールと言えます。音響反射板の取り付け方や、プロセ二アム・スピーカーとの関係などにも、かなりこだわりました」(渡邉氏)

『ザ・グランドホール』のコンソールとしてRIVAGE PM10を導入

そして『ザ・グランドホール』の音響システムの核として導入されたのが、「ヤマハ」のデジタル・ミキシング・システム、「RIVAGE PM10」だ。機材の選定はオープンの約3年前から開始し、その中心となるコンソールに関してはかなり悩んだとのことだが、ちょうどいいタイミングで「RIVAGE PM10」が発表になったという。
「コンソールを選定するにあたっては、出力の数とヘッドアンプの強さ、そして操作性の3点を重視しました。なぜ出力の数を重視したかと言うと、この『ザ・グランドホール』はメインと補助を合わせたスピーカーの数がとても多いんです。プロセニアム・スピーカーがLCR合わせて15台、サイド・スピーカーがLR合わせて16台、オケピット補助スピーカーが上下手合わせて2台、シーリング・スピーカーが4台、ステージ・フロント・スピーカーが6台、固定はね返りスピーカーが4台、客席3F・4Fの後部補助スピーカーが8台、バルコニー補助スピーカーが18台、全部で73台ある。しかし普通のコンソールでは到底それだけの出力を賄うことができないので、「DME」のような機材をマトリクス用に組み合わせるしかないんですが、そういったシステムではコンソールとは別のオペレーションが必要になってきます。場合によっては、もう一人オペレーターが必要になるかもしれませんしね。その点「RIVAGE PM10」は出力の数が108chと十分なので、これだったらコンソール1台ですべてを完結できると思ったんです」(岩本氏)

加えて渡邉氏は、オーディオの伝送系がしっかりしていることも「RIVAGE PM10」選定の決め手となったと続ける。
「久留米市の方からは最初の段階で、館内の各施設、『ザ・グランドホール』や中規模ホール『久留米座』、クリエイティブ・スペース『Cボックス』、『六角堂広場』、会議室の距離感をできるだけ縮めたいというリクエストがありました。せっかくすべてを新規に造るのだから、『ザ・グランドホール』の音を会議室に送ったり、『六角堂広場』の音をホール側に取り込んだりといった施設間のオーディオのやり取りを簡単にできるようにしたいと。そういったリクエストに応えるには、最大400chのオーディオ・ネットワークを構築できる“TWINLANe”を基盤に、Danteにもフル対応できる「RIVAGE PM10」が最適な選択でした」(渡邉氏)

久留米シティプラザに導入された「RIVAGE PM10」は、コントロール・サーフェース「CS-R10」が1台、DSPエンジン「DSP-R10」が1台、I/Oラック「RPio622」が2台というシステム構成。「CS-R10」と「DSP-R10」は調整室に、「RPio622」は1台が調整室、もう1台は舞台袖に設置。「DSP-R10」と「RPio622」には、256ch TWINLANeネットワークI/Oカード「HY256-TL」が装着され、各コンポーネントは“TWINLANe”によってネットワーク接続されている。
入出力に関しては、調整室の「RPio622」に、16chマイク/ライン入力カード「RY16-ML-SILK」と16chアナログ出力カード「RY16-DA」が1枚ずつ装着され(アナログ16ch入出力)、舞台側の「RPio622」には、「RY16-ML-SILK」と「RY16-DA」が2枚ずつ装着されている(アナログ32ch入出力)。

さらに「DSP-R10」には、144ch DanteネットワークI/Oカード「HY144-D」も装着し、アウトプット・プロセッサー「DME64N」に送出している。「RIVAGE PM10」をはじめ、中規模ホール『久留米座』の「CL3」、マルチ・スペース『Cボックス』の「CL1」、施設中央の広場『六角堂広場』のDante回線は、すべてマシン・ルームの「RSio64-D」に集約され、施設間でのオーディオ送受信が可能になっている。
「施設内でオーディオ・ネットワークを構築したことによって、コンベンションなどのホールや会議室を併用するような大規模なイベントにも対応できるようになりました。光ファイバーも入っていますので、音声だけでなく映像も施設間で伝送できるようになっています」(渡邉氏)

“SILK”プロセッシングによって言葉の明瞭度を上げることができる

既に半年近く運用されている久留米シティプラザの「RIVAGE PM10」。これまで様々なイベントで使用されたとのことだが、岩本氏はサウンド/使用感ともにとても満足していると語る。
「ヘッドアンプは想像していた以上に強さを感じますね。もちろん上げ過ぎれば歪んでくるんでしょうが、普通の使い方ではまず歪みません。60dB近くまで上げてもハウリングが起きることもありませんし、小さい音もグッと上げれば、しっかり入ってくる。音も自然な感じで、とても優秀なヘッドアンプだと思います。
操作性も良いですね。フェーダーのタッチもちょうどいい感じですし、タッチ・スクリーンの反応もいい。何より気に入っているのが、サーフェースの右上に操作子が集約されているところ。普通のデジタル・コンソールであればタッチ・スクリーンでやらなければいけないような操作が、「RIVAGE PM10」ではスイッチで瞬時に操作できるんです。操作性に関しても、非常によく考えられていると思います」(岩本氏)
渡邉氏は、サーフェースのコンパクトさは「RIVAGE PM10」の大きなアドバンテージであると続ける。
「このコンソールは、現時点でのヤマハのフラッグシップ、技術の集大成だと思うんですが、すべてが詰め込まれているのにサーフェースはコンパクト。オペレーターが座った状態ですべての操作子に手が届くというのがいいですね」(渡邉氏)

岩本氏は「RIVAGE PM10」の特に気に入っている機能として、レジェンド:Rupert Neve氏と「ヤマハ」が共同開発した“SILKプロセッシング”を挙げる。
「先ほど紹介したとおり、このホールの残響は短めなんですが、音楽用の設計になっているので、講演会などでは低音が気になることもあるんです。しかしそういった低音をハイパス・フィルターやEQを使って完全に削り取ってしまうと、今度は言葉の持つ強さが欠けてしまう。しかしあるとき、“SILKプロセッシング”をBLUEの設定で試してみたら凄く良くて、言葉の明瞭度が上がったんです。ちょうどいいところが上手く持ち上がるというか、きっと良いカーブになるんでしょうね。それ以来、講演会では必ず“SILKプロセッシング”を使うようになりました。
それと内蔵エフェクトのディレイも気に入っている機能の一つです。音も良いんですが、ディレイ・タイムをテンキーで入力できるのが便利なんですよ。エンコーダーで微調整すると、回し過ぎちゃったりしますからね。その点テンキーなら、欲しい値を一発で入力することができますから」(岩本氏)
久留米シティプラザ『ザ・グランドホール』の音響を担う「RIVAGE PM10」。岩本氏は、その充実した入出力と柔軟な仕様によって、複雑なシステムをシンプルに実現できたと評価する。
「数ヶ月使ってみて感じるのは、ヤマハ・コンソールの伝統であるシンプルで使いやすいという点がしっかり継承されているなということ。あとは信頼性の高さもそうですね。サポートも万全ですし、使っていて安心できるコンソールだと思います。今後は他のホールとの兼ね合いもあるんですが、96kHzで運用するなど、サウンドの質をもっと引き上げていきたいと考えています」(岩本氏)

データ

製品情報 RIVAGE PM10

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