【導入事例】株式会社SCRAP 様 東京ミステリーサーカス / 常設型謎解きテーマパーク / 東京都

Japan / Tokyo, May 2018

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2017年12月19日(火)、東京・新宿歌舞伎町に国内最大級の常設型謎解きテーマパーク「東京ミステリーサーカス(TOKYO MYSTERY CIRCUS)」がオープンしました。この施設は地下1階、地上4階の全5フロアで構成されており、延べ面積は約500坪。リアル脱出ゲームをはじめ、常時8種類以上の体験型ゲーム・イベントが楽しめるユニークな都市型知的エンターテインメント施設です。
その音響機器としてヤマハのデジタルミキシングコンソールTF1、ミキシングコンソールMGシリーズ、サーフェスマウントスピーカーVXS5、スピーカーシステムVS4、パワーアンプリファイアーXM4180、MA2030aなどが導入されました。その導入の経緯や選定理由について、東京ミステリーサーカスを運営する株式会社SCRAPの TOKYO MYSTERY CIRCUS総支配人 きだ さおり氏、音響設備のプランニングと施工を担当した株式会社Synkの松田 健一氏にお話をうかがいました。


まず総支配人・きだ様にうかがいます。「東京ミステリーサーカス」とは、どのような施設なのでしょうか。

きだ氏
ここにはリアル脱出ゲームをはじめ、リアル捜査ゲーム、リアル潜入ゲーム、プロジェクションテーブルゲームなど様々な体験型のゲームコンテンツが勢揃いしている、今までにない常設型謎解きテーマパークです。東京ミステリーサーカスに遊びに来ていただければ、少女を助け出すヒーローにもなれるし、施設にスパイとして入り込む経験もできる、そんな非日常的な体験をしていただけます。

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東京ミステリーサーカスは、最も大きいリアル脱出ゲームの施設なのでしょうか?

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きだ氏
私たちは「 “世界一謎がある”テーマパーク」というキャッチコピーをつけていますが、リアル脱出ゲームを様々な場所でプロデュースしている弊社が運営する施設としてはもちろん一番大きい施設になります。また自分が主人公となって物事を動かしていく参加型のゲームコンテンツとしては、世界的に見ても「最大級」と言っていいのではないかと思っています。

リアル脱出ゲームなどの参加型ゲームコンテンツの場合、音響が果たす役割は大きいのでしょうか?

きだ氏
非常に重要な要素だと考えています。音はコンテンツに深く関わっていて、たとえば登場人物のセリフの中には、謎解きのキーワードが入っていますから、もしセリフが聴き取りづらかったらゲームの進行に差し障ります。また声優さんの「助けて!」というセリフも、参加者の胸にリアルに響かなくてはストーリーに入り込むことができません。それに船が沈没していく様子なども超低域の音でリアルに表現しています。

BGMや館内放送などが一定の音量で再生できればいい、という一般的な施設の音響システムとは全然ちがいますね?

きだ氏
そうなんです。それでいつも松田さんにお願いして、ご苦労をかけています(笑)

では東京ミステリーサーカスの音響を手掛けられた株式会社Synkの松田さんにおうかがいします。具体的には音響効果のどの部分を担当されているのでしょうか?

松田氏
施設全体の音響システムをプランニングし、実際の施工までを担当しています。こういった施設では謎解きというコンテンツが全てなので、コンテンツから「必要とされている音」のニーズを拾い上げ、できるだけいい音で提供できるようにプランニングしています。

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もともと設備音響がご専門なのでしょうか?

松田氏
それが全然ちがうんですよ。設備の音響に携わるのは、SCRAPさんが手掛けるリアル脱出ゲームの施設がほとんどで、通常はライブPAでのオペレーションをメイン業務にしています。
実はリアル脱出ゲームを作ったSCRAPの代表の方も音楽フェスを主宰しているミュージシャンの方で、私とも音楽畑でのつながりで「やってみない?」と言われたのがきっかけです。それで全国のコンサートホールZeppを巡回するツアー形式のリアル脱出ゲームの音響も担当しましたし、東京都内の常設型のリアル脱出ゲームの施設の音響にも携わるようになりました。

このたび東京ミステリーサーカスではさまざまなヤマハ製品を採用いただきましたが、ヤマハを選んだ理由を教えください。

松田氏
こういった施設の特性上、専門家ではない人間が音響機器を扱うことになるので、たとえばミキサーであれば、誰でも使いこなせるシンプルで扱い易い操作性を重視しました。それと信頼性ですね。ヤマハならサポートもしっかりしていますし、今までの経験からトラブルの心配もほとんどないと思っています。スピーカーに関してはコストパフォーマンスが高いですし、音もナチュラルでフラットなので使いやすいです。
他社のスピーカーだと「ドンシャリ」や「ハイ上り」のことが多く特に小さいスピーカーではその傾向が強いのですが、ヤマハはフラットだと感じます。そしてデザインもいいと思います。特にVXS5はデザインがカッコいいですよね。また見逃せないのが施工性で、実際に自分たちで施工しますからこれは切実なんですが(笑)
ヤマハは取り付けやすいです。他社だと「この位置にネジがあったら取り付けづらいだろ」っていうことがありますから。

では1階から順にご案内いただけますでしょうか。

松田氏
こちらが1階です。ミステリー広場という名前になっていますが、いわゆるエントランスです。チケットカウンター、フード、物販のブースなどがあります。

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こちらではどのような音響システムが組まれているのでしょうか?

松田氏
ここで音響として必要なのはBGMとチケットインフォメーションのナレーションです。エントランスですから、いい音でお迎えしたいですし、1階は街のノイズも入ってきますから、音量的にもしっかりしたサウンドが必要です。それでスピーカーはサーフェスマウントスピーカーVXS5を採用しました。

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天井のいろんな場所にVXS5が吊り下げられていますね。

松田氏
スピーカーの設置場所は一見ランダムに見えますが、実はお客さまの動線に沿ってお客さまが集まるところに音が行くように工夫をしています。このフロアではスピーカーは全部で9台のVXS5を使っていますが、それらを5つのグループに分けて音量や音質を細かく調整してあります。それによってフロアをグルグル周回しても音の「山・谷」が少なく感じられるようにしました。

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では続いて2階をご紹介ください。こちらはどのような空間なのでしょうか?

松田氏
「歌舞伎町 探偵セブン」というリアル捜査スペースと「ある刑務所からの脱出」というリアル脱出ボックスがあります。「歌舞伎町 探偵セブン」は歌舞伎町に実際に出かけていく捜査ゲームなので、探偵セブンのロビーは出発とゴールの時しか使われません。ですからロビーで必要な音の要素はBGMとナレーションだけとシンプルです。音響システムとしてはロビー空間の四隅に天井から4基のサーフェスマウントスピーカーVS4を吊り下げており、それをパワーアンプリファイアーMA2030aでドライブしています。

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「ある刑務所からの脱出」はどのような音響システムになっているのでしょうか?

松田氏
これは10分間の制限時間内に謎を解いて監獄から脱出するゲームです。ここには監獄にあたる小さな部屋がたくさんあって合計8基のVS4が設置されています。それをハイインピーダンス接続してMA2030aで駆動しています。リアル脱出ボックスでの音声としては残り時間を示すカウントダウンの音声とゲームコンテンツの音声が再生されます。

2階では合計12台ものVS4をお使いいただいていますが、VS4を選ばれた理由はありますでしょうか。

松田氏
今まで様々なリアル脱出ゲームの常設施設の音響を手掛けてきましたが、一番多く使っているスピーカーがヤマハのVS4だと思います。VS4を使う理由は音質、デザイン、施工性、そしてコストパフォーマンスの高さですね。正直言ってコストパフォーマンスでVS4に勝てるスピーカーってあまりないんじゃないかと思っています。
またVS4は、特にMA2030aとの組み合わせがいいですね。MA2030aはコンパクトなのにハイインピーダンスとローインピーダンス接続の両方に対応していて、ハイパスフィルターなどが内蔵されているので、基本的な音質調整ならアンプ単体でできてしまいます。

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このような施設の場合、天井埋め込み型のシーリングスピーカーを使うケースも多いのではないでしょうか?

松田氏
施設の発想としてはそうかもしれません。でも僕たちとしては、普段コンサートPAの仕事をしているので、スピーカーを埋め込んで見えなくするよりはお客さまにスピーカーを見せたいという気持ちがあります。それとスピーカーの指向性も結構重要だと考えています。シーリングスピーカーだと空間全体にフワっと音がゆきわたってしまいますが、ボックス型のスピーカーなら音に方向性を付けることができます。
たとえばこのフロアであれば隣は別のゲームですから、このエリアだけにこの音を聴かせたい、音に方向を付けてエリアを分けたい、というニーズがあります。それとブランドバリューもありますね。スピーカーに誰もが知っている「Yamaha」というブランドがついていることも、品質感としては重要だと考えています。

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ありがとうございました。つづいて4階をご紹介ください。

松田氏
このフロアには各テーブル単位でゲームが行われるプロジェクションテーブルゲーム(PTG)ルームと、ヒミツキチラボ (小ホール)があります。

ではプロジェクションテーブルゲームからお願いします。

松田氏
プロジェクションテーブルゲームは、各テーブルに上から映像が映し出され、その映し出されたものに反応することでゲームが進行します。つまりテーブルの上だけで謎を解いていくわけですが、ここの音響は特殊で、各テーブルに振動スピーカーが取り付けられていてテーブルから音が出るんです。
開催中のイベント・ゲーム「不思議な晩餐会へようこそ」では、たとえば魔女の声、皿が割れる音、水がこぼれる音などがテーブルから聞こえます。このテーブルの振動スピーカーを駆動するアンプとしてMA2030aを使用しています。当初は別のアンプを使う予定でしたがテーブル自体を鳴らすという試みが初めてで、実際にテーブルから音を出してみるとハイを上げたりローを削ったりという音質調整が必要となりました。MA2030aはトーンコントロールを内蔵しているので、その機能を使っています。ここでは3台のMA2030aで各テーブルの振動スピーカーを鳴らしています。

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では次にヒミツキチラボ (小ホール)をご紹介ください。

松田氏
ここでは「惑星オリオンからの脱出」という60分間の脱出ゲーム行いますが、小ホールと呼んでいるように、用途に応じていろんなユースケースを想定しています。

ヒミツキチラボ (小ホール)では、ミキサーにMGP16Xを採用いただきました。

松田氏
いろんな用途に対応できるように、エフェクターを搭載した多入力型のアナログミキサーが最適だろうということでMGP16Xにしました。MGPシリーズを選んだ理由は、やはり操作性です。

小ホールの入り口にパワードスピーカーのDXR12がありましたが、これはどのような用途で使用されるのでしょうか。

松田氏
DXR12は新規購入ではなく、都内の別のリアル脱出ゲームで使っていたものをこちらに移動しました。用途としてはイベントやライブなどでフロアモニターが必要なケースなどで使用するつもりです。

最後にB1をご紹介ください。

松田氏
B1はヒミツキチラボ(大ホール)です。ここでは「沈みゆく豪華客船からの脱出」というゲームコンテンツが行われます。

かなり広いスペースですね。

松田氏
ここは様々なリアル脱出ゲームや、クイズ・演劇・トークなどの企画イベントが行われる場所で、小ホールと呼んでいるように、用途に応じていろんなユースケースを想定しています。

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ヒミツキチラボ(大ホール)の音響システムはどうなっているのでしょうか。

松田氏
ミキサーにはヤマハのデジタルミキサーTF1が入っています。このスペースでは四隅にサテライトスピーカーVXS5を4基使っていて、これらのスピーカーは4チャンネルアンプのXM4180で駆動されています。また廊下やサブの部屋にはVS4が合計6台あり、これらはMA2030aで駆動しています。

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ミキサーにTF1を選定いただいた理由を教えてください。

松田氏
「沈みゆく豪華客船からの脱出」は音響的にはアウト系統が多いコンテンツとなっています。メインのLRの出力に加えて、サブウーファーが2基、さらに4つのサテライトスピーカーがあります。また廊下やサブの部屋にある計6基のVS4も音もTF1でコントロールします。モニタースピーカーも使うことがありますから、出力は16ch、しかもイベントなどで音楽を扱うケースを考えるとEQやリバーブなどのエフェクターも必須なので、そうなるとデジタルミキサーしかないという結論に達しました

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デジタルミキサーにも選択肢はいろいろあったと思います。TF1に決めた理由をお聞かせいただけますか。

松田氏
機能としてはデジタルミキサーが必要だと思いましたが、専門ではない人間が使うことになるので操作性も大切で、なるべく扱いやすい必要があります。そうなるとヤマハかなと。それでチャンネル数、アウトの系統数で最適なもの、ということで選択した結果、TF1を採用しました。

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東京ミステリーサーカスの音響システムの構築で一番苦労した点はどのようなところでしょうか。

松田氏
一般的な設備音響と全然違う頭でやることですかね。設備音響なら図面を引いてそのとおりに設置すればいいと思いますが、このようなリアル脱出ゲーム系のものだと、コンテンツはギリギリまで変更されますし、それに伴って音響にも手直しがあります。変更の意図を理解しながら音響システムを修正しなくてはいけません。そういった点が一番大変でした。

リハーサルをしながらその都度、臨機応変に変更していくのはライブの音響にも似ていますね。

松田氏
確かに似ているかもしれません。SCRAPさんも音楽が大好きな人たちが集まった会社ですから。

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本日はご多忙のところお時間をいただきありがとうございました。

設置場所 品名 品番 個数
1F
ミステリー広場 サーフェスマウントスピーカー VXS5 9
ミキシングコンソール MG12 1
2F
リアル捜査スペース スピーカーシステム VS4 4
ミキシングコンソール MG12 1
パワーアンプリファイアー MA2030a 1
リアル脱出ボックス スピーカーシステム VS4 8
パワーアンプリファイアー MA2030a 1
4F
PTGルーム ミキシングコンソール MG10 1
パワーアンプリファイアー MA2030a 3
ヒミツキチラボ(小ホール) ミキシングコンソール MGP16X 1
パワードスピーカー DXR12 2
廊下 スピーカーシステム VS4 4
B1
ヒミツキチラボ(大ホール) デジタルミキシングコンソール TF1 1
サーフェスマウントスピーカー VXS5 4
スピーカーシステム XM4180 1
廊下 スピーカーシステム VS4 6
パワーアンプリファイアー MA2030a 2

TOKYO MYSTERY CIRCUS 東京ミステリーサーカス
https://mysterycircus.jp/

株式会社SCRAP
http://www.scrapmagazine.com/

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