Better Sound for Commercial Installations

Part 1: Sound Basics

Application 2: 身の回りの音響システム~BGM(環境改善)

ショッピングセンターや飲食店、ホテルなど、街に出ると必ずと言って良いほど耳にするBGMの放送。ここではBGMに期待されている役割、そして、その効果を発揮するための音響システムのあり方についてご紹介します。

たくさんあるBGMの活用シーン

Marching Keyboards

ご存知の方も多いと思いますが、BGMはBackground Musicの略で、文字通り「背景」として流される音楽を指します。工場で作業員の労働環境を改善するために導入されたのが起源と言われていますが、その後の研究で、実際にBGMが疲労の軽減や士気の向上に貢献し、生産性を高めるということが実証されているようです。

BGMの活用シーンは広がり、ショッピングセンターや飲食店、ホテルなどでは空間の雰囲気づくりに活用されています。特にショッピングセンターなどではBGMによってお客さんの滞在時間が延び、売上の増加につながると言われています。また病院では穏やかで明るめのBGMを流すことで、患者さんの治療に伴う恐怖心や痛みを軽減する効果があるようです。その他にも、オフィスやアミューズメント施設など、さまざまな場所でBGMを耳にするのではないでしょうか。

また従業員向けの内部メッセージを、お客さんに気付かれずに伝えるために用いられることもあります。たとえばデパートで、雨が降り始めた時に流すBGM曲をあらかじめ決めておき、その曲を合図にして従業員が包装紙を防水仕様のものに切り換える、といった対応ができます。業務放送としてアナウンスするのに比べて、お客さんの注意を引かず、売り場の雰囲気も損なわない良いアイデアですね。

(図:BGMは快適な環境づくりにとても効果的。 さまざまな用途に活用されています。)

BGMの効果:リラクゼーションとマスキング

いろいろな事例をご紹介しましたが、一般的にBGMの効果は大きく2点に代表されます。1点目は、音楽を聴くことで体の緊張を解き、人をくつろいだ状態にするリラクゼーション効果です。2点目は、BGMによってOA機器やエアコンの運転音といった小さいけれども気になるノイズを聞こえにくくするマスキング効果です。マスキング効果は、大きな音と小さな音が同時に鳴っている場合に、大きな音が認識されて小さな音が認識されにくくなるという人間の耳の特性によるものです。いずれも快適な環境づくりに貢献するものであり、BGMがさまざまな場所で浸透しているのもうなずけます。

BGMに適した音響システムのデザインとは?

BGMが快適な環境づくりに貢献することを紹介してきましたが、かといってBGMが必要以上に人の注意を引くようでは、耳障りになったり気が散ってしまったりと逆効果になってしまいます。BGMは、あくまで背景の音楽ですから、「さりげなく聞こえている」という状態が理想的と言えるでしょう。

そのためには音量を適切に設定することは言うまでもありませんが、どこから音が鳴っているのか(音源の方向感)をあまり感じさせないよう、空間全体が均一な音量になるようにスピーカーシステムを配置する必要があります。このようなスピーカーシステムの配置を「分散配置」と呼びます。分散配置についてはPart 2の「スピーカーシステムの配置方法と必要な音圧レベル」でご紹介します。

さらに、スピーカーシステムがインテリアの中で目立っていると、耳だけでなく目でも音源を意識してしまいますので、形状の選択や取り付け方法にも配慮する必要があります。これについてはPart 2の「スピーカーシステムの種類」でご紹介します。

 

今までご紹介してきたアナウンス放送やBGMは、どちらかと言うと音を施設運営のために補助的に活用する用途でした。それに対して、次にご紹介するライブ・イベントは音が主役に躍り出る、PAの最も発展的な形態です!