Better Sound for Commercial Installations

Part 1: Sound Basics

ライブ・イベントに行くと、客席の真ん中でミキサーを操作したり、ステージ上で機器の調整に忙しく動き回っている人たちを見かけます。音を扱うプロフェッショナルとして、私たちが一番イメージしやすい姿ですね。当然、非常に専門的な分野ですが、その内容を簡単にご紹介しておきましょう。

音楽のPAを特にSRと呼ぶ

Marching Keyboards

ここでご紹介するのは、ライブ・イベントにおいてスピーチや演奏された音楽を聴衆に届けるためにおこなう拡声です。この場合の音は、ライブ・イベントにおいて主役級の役割を果たしている場合が多いため、聴衆にどのような音質で聞かせるかという「音のデザイン」の観点が求められます。

先にも触れたとおり、PAという言葉はライブ・イベントで音響システムを扱う仕事を指すことが多いですが、その中で特に音楽を扱うPAを「SR(エスアール)」と呼びます。これはSound Reinforcementの略で、「音の補強」を指します。PAは多くの聴衆に音を届けるための「音量の拡大」というニュアンスですが、SRとなると一律の拡声ではなく、各楽器の音量のバランスや音質を整えるなど、ライブ・イベントを創り上げる重要な要素として音を総合的にデザインするニュアンスを感じます。

このコンテンツで「ライブ・イベント」という場合、当然、音楽演奏も含みますが、スピーチ主体のトークイベントも想定されますので、この後の説明ではSRも含めてPAという呼称を使うことにします。

(図:ライブ・イベントにおける音は、そのショーの重要な構成要素。積極的な「デザイン」が求められます )

ライブ・イベントに適した音響システムのデザインとは?

PAとひと口に言っても、ライブカフェのような小規模なシステムから野外コンサートで使用される数十万人単位の超大規模なシステムまで幅広く存在します。またロックとワールドミュージックなど、演奏されるサウンドの違いによって形態は変わります。したがって音響システムも、規模や演奏の中身に応じた選択が迫られます。

ただし規模や用途の違いによらず共通するのは、ライブ・イベントは長時間に及ぶこともあるため、明瞭でフラットな音のデザインが求められるということです。音がこもって聞き取りづらかったり、特定の音域が極端に大きかったり小さかったりすると、聴取者が聞き疲れしてしまうことにもなりかねません。

またBGMと異なり、演奏者や話者がいる方向から音が聞こえるようにするなど、音の方向感は「音のデザイン」の重要な一環です。そのため自然な音の方向感を実現できるようにスピーカーシステムの配置やチューニングをおこなう必要があります。スピーカーシステムの配置についてはPart 2「スピーカーシステムの配置方法と必要な音圧レベル」、スピーカーシステムのチューニングについてはPart 3の「チューニングによる音づくり」で、それぞれご紹介します。

 

以上、3回にわたって音響システムの形態を用途別に見てきましたが、その中で何度か触れたオペレーションの簡易化、あるいは自動化というキーワードが気になった方もいるのではないでしょうか。このようなことが可能になった背景に、次でご紹介する音響システムのデジタル化があります。