Better Sound for Commercial Installations

Part 2: Amplifers and Speakers

一般的に音響システムの検討は、スピーカーシステムの選択から始まります。おもな着目点は、拡声する空間の用途や規模、意匠・内装デザインとのバランスです。まずは商業用施設で使われる代表的なスピーカーシステムの種類と、それらの使い分けについてご紹介します。

商業用施設で使われる代表的なスピーカーシステムは、以下の3種類に大きく分類できます。

サーフェスマウントスピーカー

Marching Keyboards

天井や壁に取り付けるボックス形状のスピーカーシステムです。最も標準的なスピーカーシステムの形態です。小~中規模の施設においてはメインのスピーカーシステムとして、またホールや会議室などにおいて、メインのスピーカーシステムだけでは十分な明瞭度を得られないエリア(会場の後方など)に、補助用スピーカーとして使用されます。また館内放送やBGM用システムの分散配置(「スピーカーシステムの配置方法と必要な音圧レベル」参照)にも使用されます。

商品カタログなどを見ると、サーフェスマウントスピーカーには2ウェイ、3ウェイといった種類があります。2ウェイや3ウェイのスピーカーシステムは、低音域用、中音域用、高音域用といったように、周波数帯域をいくつかに分け、特定の帯域ごとにスピーカーユニットを1個ずつ割り当てています。小~中規模の施設で用いられるのは、おもに2ウェイです。

図:サーフェスマウントスピーカー(2ウェイ)の例 (写真はヤマハ VXS5W)

シーリングスピーカー

Marching Keyboards

天井に埋め込むスピーカーシステムです。意匠的にスピーカーシステムを目立たせたくない空間に適しており、音の方向感が必要とされない館内放送やBGMが中心の施設で分散配置(「「スピーカーシステムの配置方法と必要な音圧レベル」参照)に多く用いられます。またサーフェスマウントスピーカーと同様に補助用スピーカーとしても使用されます。

図:シーリングスピーカー(写真はヤマハ VXC4W)

コラムスピーカー

Marching Keyboards

複数個の同種類のスピーカーユニットを縦に並べて配置した柱(=コラム)状のスピーカーシステムです。このようにスピーカーユニットを配置すると、垂直方向、すなわち床や天井の方向に音が広がりにくくなり、音の反射を抑制することができます。また音が垂直方向に広がりにくい分、音のエネルギーが拡散しないため、音の減衰(「スピーカーシステムの配置方法と必要な音圧レベル」参照)が少ないという特長もあります。コラムスピーカーは、教会や体育館などの残響が多い施設や、会議室、講堂、講義室など、スピーチ用途中心の施設で多く用いられます。

(図:コラムスピーカーの構造)

以上ご紹介してきた商業用施設で使われる代表的なスピーカーシステム以外に、特定の用途に使われるスピーカーシステムを2種類ご紹介しましょう。

サブウーハー

Marching Keyboards

通常のスピーカーシステムでは再生が難しい、重低音を補うための独立したスピーカーシステムです。重低音が響くと、「耳で聴く」というよりは音圧を「体で感じる」ような迫力が生まれます。おもに音楽が中心のライブ・イベント会場で使用されます。Part 1の「「音の仕組み」でご紹介したとおり、人間の耳は重低音の方向感を感じ取りにくいため、比較的サブウーハーは場所を選ばずに自由に設置できます。

図:サブウーハーの例 (写真はヤマハ IS1118)

(SR用)大型スピーカー

Marching Keyboards

劇場やホール、スタジアムなど、大きな音圧を必要とする大規模施設のメインスピーカーシステムです。広帯域、大出力の大型スピーカーシステムや、コラムスピーカーの原理をより発展させたラインアレイタイプのスピーカーが使用されます。

図左:大型スピーカーシステムの例 (写真はヤマハ IF3115)

図右:ラインアレイスピーカーの例 (写真はNEXO GEO D System)

シーリングスピーカーやコラムスピーカーに比べて、サーフェスマウントスピーカーは建築的な条件に合わせて下振り角度などを調整して設置する必要があります。そのため取付金具などの設置用オプションが数種類用意されていて、設置する空間に適した取付方法が選択できるようになっています。

(図:左から天井取付例、壁面取付例、バトン取付例、天井吊下げ例、Uブラケット取付例)

Marching Keyboards
Marching Keyboards

また商業用施設において、スピーカーシステムはどうしてもお客さんの目に付きます。特にサーフェスマウントスピーカーは、シーリングスピーカーやコラムスピーカーよりも目立つため、意匠・内装デザインに影響を与えます。音楽イベントやライブが行なわれるような会場では、スピーカーシステムの存在感をあえて高めることが雰囲気作りに役立つかも知れません。一方バンケットルームのように、空間演出上、スピーカーシステムを目立たせたくない施設もあるでしょう。

このような場合、例えばヤマハの「インストレーションシリーズ」のように、ホワイトモデルが用意されている機種がありますので、内装に合わせて活用するとインテリアを損ねません。また「Concert Club VCシリーズ」のようにエンクロージャーを任意の色に塗装できる機種もあります。

図左:ホワイトモデルが用意されている機種例 ヤマハ「インストレーションシリーズ」IF2112

図右:エンクロージャーを塗装できる機種例 ヤマハ 「Concert Club VCシリーズ」 C112VA

以上、スピーカーシステムの種類についてご紹介しました。商品カタログを見ると、多種多様なスピーカーシステムが掲載されていますが、機種選択時の着目点のひとつとして参考にしてください。次は、スピーカーシステムをどのように配置するか、というお話です。